2026年度
物理学分野
笠 真生(りゅう しんせい)博士
Dr. Shinsei Ryu
受賞理由
量子情報と重力の幾何学が深く結びついていることを明らかにするとともに、トポロジカル物質の体系的な分類の道を開いた
略歴
Education | 学歴
- The University of Tokyo Ph.D. Applied Physics, 2005
- The University of Tokyo M.S. Applied Physics, 2002
- The University of Tokyo B.S. Physics, 2000
Professional Appointments | 職歴
- Professor of Physics, Princeton University (2020–)
- Visiting Scientist, RIKEN, Japan (2016–)
- Professor of Physics, University of Chicago (2019–2020)
- Associate Professor of Physics, University of Chicago (2017–2019)
- Associate Professor of Physics, University of Illinois at Urbana-Champaign (2016–2017)
- Assistant Professor of Physics, University of Illinois at Urbana-Champaign (2011–2016)
Awards | 受賞歴
- Dirac Medal of the ICTP, 2024
- Simons Investigator Award, 2018
- Nishina Memorial Prize(仁科記念賞), 2015
- New Horizons in Physics Prize, 2014
- Nishinomiya-Yukawa Memorial Prize(西宮湯川記念賞), 2013
and many others
研究概要
量子もつれとは、離れた粒子どうしが互いに切り離せない状態にあることをいう。笠博士は2006年、高柳匡氏(現・京都大学基礎物理学研究所 教授)とともに、場の理論で測られるもつれの大きさが、重力理論の側では曲面の面積に一致することを示した。笠-高柳公式と呼ばれるこの関係式は、時空の幾何そのものが量子もつれから生まれているのではないかという問いの出発点となり、量子重力研究の流れを大きく変えた。博士はまた2008年から2010年にかけて、アンドレアス・シュニーダー氏(現・マックスプランク研究所 グループリーダー)、古崎昭氏(現・理化学研究所 グループディレクター)、アンドレアス・ルードヴィグ(カルフォルニア大学 教授)と共に、対称性と次元性に着目して、トポロジカル絶縁体・超伝導体が10のクラスで分類されることを示した。「トポロジカル周期表」と呼ばれるこの分類は、未発見の物質相を予言する設計図として使われている。
※笠-高柳公式:量子もつれの大きさと、重力理論における曲面の面積を結びつける関係式
※トポロジカル周期表:対称性と次元性により、トポロジカル絶縁体・超伝導体を10種類の対称性クラスで分類する一覧表
選考ポイント
- 量子情報と重力という、通常は別分野とされる二つの領域を一つの関係式で結んだ独創性。
- 時空の幾何が量子もつれから生まれるという問いを立て、量子重力研究の流れを規定したこと。
- 対称性と次元性により、トポロジカル絶縁体・超伝導体を10種類の対称性クラスに分類し、物質相の分類学を確立した体系性。
- 未発見の相を予言する枠組みを与え、トポロジカル物質の探索を現在も導いていること。