
知の頂を京大に:研究の未来を拓く
Pinnacles of Intellect: Paving the Way for Future Research at Kyoto University
京都大学レクチャーシップアワード 2025 [医学・生命科学分野]
受賞者紹介

クリフォード・ブラングウィン 博士
Dr. Clifford Brangwynne
プリンストン大学 オーメン=ダーリング生体工学研究所 所長
プリンストン大学 化学・生物工学科 ジューン・K・ウー ’92 記念教授
ハワード・ヒューズ医学研究所(HHMI)インベスティゲーター
1978年4月24日生まれ(47歳)
受賞理由
「液-液相分離(LLPS)」が細胞内の空間的組織化の基本原理となることを発見
略歴
Education|学歴
・Harvard University Ph.D. Applied Physics, June 2007
・Carnegie Mellon University B.S. Materials Science & Engineering, minor in Physics, with University Honors, May 2001
Professional Appointments|職歴
・Professor, Princeton University (2019–present)
・HHMI Investigator, Howard Hughes Medical Institute (2018–present)
・Marine Biological Laboratory (2024–present)
・Associate Professor, Princeton University (2017-2019)
・Assistant Professor, Princeton University (2011-2017)
・Max Planck Institutes for Molecular Cell Biology and Genetics & MPI for Physics of Complex Systems, Dresden, Germany (2007-2010)
Awards|受賞歴
・Keio Medical Science Prize, 2025
・Breakthrough Prize for Life Sciences, 2023
・HFSP Nakasone Award, 2021
・Wiley Prize in Biomedical Sciences, 2020
and many others
受賞研究概要
細胞内には核やミトコンドリアのような「膜で囲まれた構造」に加え、「膜のない凝集体」が存在する。ブラングウィン氏は、物理学で知られていた「液-液相分離(LLPS)」という原理が、生きた細胞の中でも働き、膜を持たない凝集体の形成を説明できることを明らかにした。この発見は、細胞の区画は膜によって仕切られるという従来の常識を覆し、細胞の空間的組織化にパラダイムシフトをもたらす新しい基本原理を提示したものである。
LLPSは、シナプス後肥厚部や核小体、ストレス顆粒、さらにはALSなどの神経変性疾患の理解にもつながり、細胞生物学の教科書を書き換えるほどのインパクトをもたらした。
選考ポイント
- 物理学の視点を活かし、従来見過ごされていた現象を捉えた独創性
- 「液-液相分離(LLPS)」という物理現象が生きた細胞内でも働くことを実証し、細胞の空間的組織化がLLPSで説明できることを示した(パラダイムシフト)
- 記憶や遺伝子発現制御、神経変性疾患など幅広い生命現象に普遍的な説明を与える理論的基盤を確立
- ファンダメンタルかつ将来性の高い発見であり、すでに国際的に高く評価されている点が、
本アワード受賞者として最もふさわしいと判断された
2025年度 選考委員会
委員長
- 斎藤 通紀 高等研究院 教授・医学研究科 教授
ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)・拠点長
副委員長
- 林 康紀 医学研究科 教授
委員(五十音順)
- 井垣 達吏 生命科学研究科 教授
- 小川 誠司 医学研究科 教授
- 見学美根子 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点 教授
- 高橋 淑子 理学研究科 教授
- 髙橋 良輔 総合研究推進本部 特定教授(医学研究科 名誉教授)
- 滝田 順子 医学研究科 教授
- 竹内 理 医学研究科 教授
- 土居 雅夫 薬学研究科 教授
- 村川 泰裕 医学研究科 教授
- 矢部 大介 医学研究科 教授
授賞式・記念講演

授賞式・記念講演
日時:2026年4月中旬
場所:京都大学 百周年時計台記念館
京都大学レクチャーシップアワードについて
京都大学レクチャーシップアワードは、2025年度に創設された新しい国際学術賞です。アジア最多のノーベル賞受賞者を輩出してきた京都大学が、その伝統を背景に、次代の科学技術を切り拓く新進気鋭の卓越した研究者を顕彰し、国際的な研究ネットワークの形成と健全な学術の発展を推進することを目的としています。
本アワードの特色は、受賞者を京都に招へいし、特別レクチャーおよび交流を通じて次世代研究者に触発の機会を提供する点にあります。卓越した成果を挙げた受賞者と新進の次世代研究者が邂逅し、学問の最前線で培われた知と視座を共有することで、新たなインスピレーションの連鎖を生み出し、未来を拓く研究の萌芽を育むことを期しています。
受賞者は京都に招待され、記念講演を行うとともに、京都大学の学生・教員との学術交流にご参加いただきます。この機会を通じて、京都大学は、次世代を担う研究者の挑戦を支えるとともに、その知を社会へ広く発信し、学術の未来に寄与します。
また、記念講演および授賞式は、京都大学総長をホストとして実施される予定です。
選考方針
以下のような資質を持つ研究者を対象に選考を行います。
- 学問分野の源流を開拓し、一分野を築きつつある研究者
- 根源的な問いに取り組み、学術の顕著な発展や社会的課題の解決に資する研究を推進する研究者
具体的には、下記のような観点を考慮した上で、総合的に評価します。
- 学問分野を開拓し、源流を築きつつあること(Pioneering Nature)
学問の新たな地平を切り拓き、あるいは既存の分野を刷新することで、その分野の源流を築きつつある独創的な研究を展開していること - 根源的なインパクトを有すること(Fundamental Impact)
その成果が、学術的パラダイムの転換をもたらす、または将来的に社会・人類に大きなインパクトを与える可能性を持つこと - 理論や方法が美しく、発展性を持つこと(Elegance and Prospect)
理論や方法の構造が「美しい」と評価されるものであり、今後さらなる発展や応用が見込まれること - 評価が確立されつつあること(Emerging Recognition)
予測に依拠するのではなく、既に一定の評価を得つつある実績を有していること
審査体制
京都大学を代表する一線級の研究者を選考委員に任命し、厳正かつ独立した審査を実施します。
協賛・後援者の紹介
本アワードは、以下の企業・団体・個人の皆さまのご支援により実施されます。
スポンサー
本アワードの運営・授賞式・受賞者招へいなどを支えるためにご寄付を賜った企業・団体の皆さまです。

村田機械株式会社

日本電子株式会社

アステラス製薬株式会社



ホスピタリティパートナー
宿泊施設や会場、サービス等をご提供いただき、受賞者および参加者へのおもてなしを支えてくださる企業・団体の皆さまです。

- 受賞者へ 京都内のVIPルームのご提供:【公式】三井ガーデンホテル京都三条プレミア
- 本アワード関係者の皆さまへ 期間限定割引のご提供:三井不動産グループが運営する世界約50のホテルを特別割引価格でご利用いただける予約サイトにて、期間限定ID/パスワードを発行しております。詳細は事務局にてご確認下さい。
三井不動産 ホテル・リゾート法人優待 法人優待サイト(31corp.jp)
よくある質問
誰が対象ですか?
候補者は、京都大学の教員からの推薦をもとに、選考委員会による審議を経て選出されます。
※一般公募・外部推薦の受付は行っていません。
※対象は原則50歳未満の研究者です。
他の分野も対象になりますか?
第1回は医学・生命科学分野を対象として選考しますが、将来的には他分野への拡大を検討しています。
どのくらいの頻度で実施されますか?
概ね年1回の実施を予定しています(詳細は決定次第公開します)。
問い合わせ
京都大学 総合研究推進本部 レクチャーシップアワード事務局
lectureship-award*mail2.adm.kyoto-u.ac.jp *を@に変えてください。